研究者・学生の方へ

蕁麻疹の疫学および病態形成機序の研究

 蕁麻疹は皮膚の発赤を伴う膨疹が短時間のうちに出没する疾患で、その誘因の有無や種類により多数の病型に分類されます。ありふれた疾患ですが、日本における病型毎の頻度、実際の治療内容、特に難治例に対してどのような治療が行われているかは、明らかになっていません。そこで、私たちは広島県内の複数のクリニックと協力して蕁麻疹で受診する患者の病型調査を行っています。また、全国の蕁麻疹診療に注力している病院に参加を呼びかけて、実際の治療内容、特に最新の治療でも十分に効果が得られない難治例に対してどのような診療が行われているかを調査しています。本研究により、国内における蕁麻疹患者の実態が把握され、難治例に対する治療方針の策定にもつながることが期待されます。

 

 蕁麻疹の皮膚症状は、皮膚マスト細胞から遊離されたヒスタミンの作用により形成されます。これまでは、自己抗体がマスト細胞上のIgE受容体やIgE抗体に結合することで、ヒスタミンが遊離されると考えられてきました。しかし、自己抗体が検出されない症例も多く、蕁麻疹の病態におけるマスト細胞の活性化の機序や血管拡張・透過性亢進のメカニズムには依然として未解明な点が多くあります。近年、血液凝固能の亢進が蕁麻疹の病態形成に関わることが明らかとなっており、私たちは血液凝固系に着目することで蕁麻疹の病態解析を進めています。これまでヒスタミンとLPSが共同して血液凝固の開始因子の発現を増強し、続いて活性化された凝固因子が血管透過性を亢進することを明らかにしました。また、活性化凝固因子は補体C5の活性化を誘導することでマスト細胞の脱顆粒を生じることも報告しました。本研究は、血液凝固因子や補体を標的にした新しい蕁麻疹治療薬の開発につながることが期待されます。